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広告運用でRTB優先配信を行う際に気をつけたい3つのこと

初めまして、マーケティング部マネージャーとして広告事業を担当しているdrillです。 アドネットワークやSSP等の配信広告運用や広告売上の管理を主な業務としてやっています。

私からは「広告運用でRTB優先配信を行う際に気をつけたい3つのこと」をテーマにしてお届けします。

【1】 適切なフロア設定について
【2】 フィラーへの影響について
【3】 定期的な見直しについて

と、その前にまず前提のRTB優先配信の説明から。

前提:「RTBの優先配信」とは?

RTB(Real-Time Bidding)とはユーザーのアクセスが発生するごとに各々の配信広告システム側で広告掲載の競争入札を行い、最も高い入札の案件を配信する方式のことです。高価値なユーザーのアクセスを高単価で買付けする仕組みのことですね。

このRTB配信に優先的に広告リクエストを飛ばし、あらかじめ設定しておいた最低価格(floor price)以上の入札が行われない時のみフィラーとして設定しているアドネットワーク等にリクエストを受け渡すように設定しておくことで、収益増加に繋がる場合があります。

例として、A社のアドネットワークがeCPM30円程度で配信されている100,000imp/日ほどの枠があったとして、ここにfloor price50円で設定したB社のRTB優先配信を差し込み、その結果、仮に引当率20%ほどでeCPM50円の配信が行われれば以下のような収益増加が起こります。

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全体配信量の20%となる20,000impの配信についてはA社のアドネットワークのeCPM30円よりも高いeCPM50円でB社の配信が行われたのでその分のプラスオンが発生していることになります。対してA社は配信量が80,000impに低下したため、3000円→2400円まで収益低下しました。

こういった手法・概念自体は国内では2012年くらいから普及しており、実施してるメディアも多いことと思いますし、現在ではより複雑でより高度に、こういった配信の最適化を行えるプラットフォームも多くなってきています。

ただ、「高価値なユーザーのアクセスを高単価で買付けしようとする」基本の概念は一緒ですので、今回の記事については上記の例を元にして、改めて気をつけたい点について紹介します。

※なお、この優先配信の概念についてはRTB配信に限った話ではないのですが、説明の簡略化のため、本稿では最もメジャーな「RTB配信」という言葉を使用しますのでご注意ください。

前置きが長くなりましたが以下本題となります。

【その1】適切なフロア設定について

上記の例ではeCPM50円というfloor priceを設定していました。ただ、この50円が果たして最適なのか、という点については検証の余地があります。仮に、

  • floor price40円に設定して引当率30%まで上昇するのであれば 30,000imp×eCPM40円=1,200円なのでRTB収益は増加しますし、

  • floor price60円に設定して引当率15%まで低下するのであれば 15,000imp×eCPM60円=900円なのでRTB収益は減少します。

入札価格のボリュームゾーンがどこにあるかを探りつつ、適切なfloor priceを設定する必要があります。

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また、RTB配信の収益を最大化するだけなら、単純に「引当率×eCPM」が最大となる箇所を探すのみでいいのですが、トータルの収益を最大化するためには、フィラーとなるアドネットワーク(上記例のA社)に配分されるimp量にも気を払う必要があります。

極端な例を上げると、floor price32円まで下げて引当率を80%まで大きく上昇させることができた場合、B社のRTB収益は2,560円と大きく上げることができますが、その場合のアドネットワークに配分されるのは20,000imp(全体の20%)なので600円、両社を合計しても3,160円となり、floor price50円設定の時の方がトータルの収益は大きくなります。

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{総imp×(100%-B社引当率)×A社eCPM}+(総imp×B社引当率×B社eCPM)=トータルの枠収益

上記の式の左側部分も気にしないといけないため、RTBの収益があまり変わらないのであれば 引当率が低くeCPMが高い箇所を採択した方がいいということになります。

(RTB配信が「eCPM35円×引当率45%」でも「eCPM45円×引当率35%」でもRTBの収益は変わらないですが、トータルの収益は後者の方が優れているということです)

なおピクシブでは、金額規模の大きい枠についてはSSP等の事業者側にfloor priceごとの引当率予測値をシミュレーションしたデータを出してもらいそれを参考にfloor priceの設定・検証を進めていくこともあります。

【その2】フィラーへの影響について

RTBの配信が追加されることでフィラーのネットワークには様々な影響が出ることがあります。

CTR・CPC等の低下

まず考えられるのが、CTR・CPC等の低下です。高価値なユーザーのアクセスをRTBが先に取ってしまっているのでフィラーのネットワークに降りてくるアクセスの全体的な広告的価値は当然ながら下がります。

そのため、広告のCTRが低下したり、clickの先のCVRが低下して広告主側の入札が弱まりCPCが低下したり、結果としてeCPMを下げる要因になってしまうことがあります。RTB配信の引当率が大きければ大きいほどこの影響も大きくなるので、数%の引当率の時よりも数十%の引当率の時のほうが顕著な変化が出るという性質のものでもあります。

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レイテンシー影響

次に気をつけなくてはいけないのが、レイテンシーの影響についてです。

A社のアドネットワークのみを配信している場合と比較して、B社のRTB配信が間に入ることによって(B社を経由してリクエストが送られることによって)、A社の広告表示速度に影響が出ることがあります。

広告表示速度に影響が出ると、それがそのままCTRの低下につながってしまい結果としてA社のeCPMは低下してしまいます。また、配信が同期タグで行われていた場合にはページの表示速度にも影響を与えてしまい、ユーザーの快適な閲覧を阻害した結果、PVが低下したりUXを損なったり該当枠以外の他枠の収益性を低下させたり、と色々な悪影響の可能性があります。(こういった影響はスマートフォンでの配信において特に顕著です。経験上、PCではそこまで大きな影響が出たことはありません。)

新しい広告サービスの配信の際には、このあたりにも影響が出ていないかを注意して、枠単位はもちろんのこと、サービス全体で見た際に本当にプラスになっているかを都度判断する必要があります。さらに複数のサービスで段階的にfloor priceを設定している場合には、そのサービス数によって与える影響もどんどんと大きくなるためなおのこと注意が必要です。

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広告リクエストの欠落

また、レイテンシーどころではなく、広告リクエスト自体が欠落してしまうこともあります。

100,000回の広告リクエストをB社に対して送信してB社がそのうちRTBで引き当てられたのが20,000impだった場合、本来であればA社へは残り80,000の広告リクエストが送られることになりますが、A社の管理画面を見ると60,000impしか配信されておらず、20,000imp+60,000imp=80,000impで残りの20,000impはどこにいった?となることも珍しくありません。 (この影響もPCよりスマートフォンの配信の方が顕著です)

こういったリクエスト送信数と実配信imp数の乖離は単一のアドネットワークの配信でも起こりうることなので、RTB優先配信等の複雑な配信設定を行う場合にはより注意が必要です。

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また、余談ですが、そもそも各社によってimpの計測方法は異なるので各社ごとの管理画面の数値を同一の基準として扱わず、何かしら統一された計測数値で測るという前提意識も重要です。これについては、ちょうど最近フォーエムさんで書かれた以下の記事が解りやすいので以下にてご紹介します。

CPMだけで広告収益を判断してませんか?そのリスクとは・・・ | FourM

ちなみにピクシブでは自社アドサーバーから送られた広告リクエストの送信数を統一の分母として各配信サービスのパフォーマンス比較を行っています。

【その3】定期的な見直しについて

RTBのfloor price設定やフィラーの数値経過等については定期的に見直しをしていくことも重要です。

時期的な要因や買付側の案件状況によって、RTBの入札状況は大きく変動しますので、1~2ヶ月前の最適解が今現在では全く最適でなくなることも珍しくありません。サービスや枠の金額規模にもよりますが、ピクシブではおおむね1週間に1度ほど状況の見直しを行っており、例えば、floor priceに特に変更を加えていないのに引当率が下がってくるサービスがあれば、floor priceの引下げを検討してみたり、別のサービスをテストしてみたりといったことで、 ある程度収益低下をカバーできないかといったことを考えるようにしています。

最後に

「RTBの優先配信を行う際に気をつけたいこと」というテーマで書きましたが、今回挙げた注意点の本質となる基本概念は配信広告運用全般において大事なことなので、DFPのダイナミックアロケーション機能を使用する際や、SSP内で複数アドネットワークを配信する際など、少しでも配信構造が複雑化した際にはいずれも気をつけたいポイントです。